熱中症対策
栗田 明(くりた あきら)
北九州地方の降雨による被害を受けられた皆様にはお見舞いを申し上げるとともに救助活動をされている方々には敬意を表します。この夏は猛暑が予測されているので熱中症対策について概説します。気象庁によると、35度以上の猛暑日は昭和30年代には殆どなかったのが最近コンクリート建物の増加などにより夜になっても熱が下がらないヒートアイランド現象が起きやすい状況になっており、京都大学の中井誠一名誉教授によると熱中症による死亡は、93年以前は、年平均67人であったのが、最近約20年間で492人に増加したと報告されています。
熱中症は高温多湿により体内の水分や塩分のバランスが崩れ体内のホメオシターシスが喪失する状態で、ひどくなると、めまい、けいれん、失神、嘔吐や頭痛を訴えることがあります。熱中症で最も注意すべき点は抵抗力のない高齢弱者の場合です。一般に高齢者は加齢により食欲や体力が失われており、複数の疾患を持っていることが多いので、持病の悪化や感染症などの併発で、持病がさらに悪化することがあります。さらに高齢者は、一人で過ごす時間が長く、倹約志向も加わり折角空調設備が装備されている部屋に居住していても、経済的な理由も加わり空調を使用するのに抵抗がある人が多く、東京消防庁によると室内で熱中症による孤独死亡例が増加しています。また最近の統計によると、東京23区内で熱中症で死亡した症例は、男性が女性より多く死亡時刻は午前5時~午後5時の日中の時間帯で、91/157(58%)はエアコン装置は装備されているのに使用しておらず、66/157(42%)の人は一人暮らしの男性であったとのことで、暑いときはエアコンは活用すべきです。具体的な対策は水分の補給ですが、一度に大量の水分を補給するとかえって体内の電解質バランスを崩して体調不全を来します。我々の体は、約0.9%のナトリウムを含んだ血液が巡回しています。熱中症予防の水分補給として日本体育協会ではナトリウムと糖分を含んだ水分補給を心がけているようです。
夏場は体温上昇や脱水により身体的負担が増加し、血液の練調度も上昇して虚血性心疾患の悪化や、血管内に血栓が出来やすくなり、教心発作や不整脈が発症しやすくなります。このような事実を踏まえて運動する際にはナトリウム、糖、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの栄養素をうまく摂取し厳しい夏を乗り切りましょう。
栗田 明