西東京市、武蔵野市 地域に根ざした介護老人保健施設を目指します

施設長の講演

お花見や音楽による癒し

春は一年で一番植物が元気な季節で、冬の間眠っていた木々が目覚め、草花がつぼみをほころばせはじめます。日本気象協会によると沖縄を除いて福岡や高知が早く東京では3月20日前後であるとのことです。

桜の木にはフィトインチッドという香気成分があり脳に作用すると精神的に安定します。我々の脈拍は毎分60~100回拍動し1日では約80,000~120,000回拍動しています。日中の脈拍は速くなり夜間睡眠中は遅くなります。精神的に緊張すると脈拍は速くなり、リラックスすると遅くなり心臓の自律神経によりコントロールされています。自律神経は交感神経と副交感神経があり、交感神経が刺激されると脈拍が速くなり不整脈が出現しやすくなり心臓発作や脳梗塞発作が発生しやすくなります。

副交感神経が刺激されると脈拍は遅くなり血管は拡張します。加齢にともない皮膚に皺ができるように、血管内にも動脈硬化による皺ができ血液の流れが遅くなり血栓ができます。精神的な緊張痔や運動時には身体全体の組織に酸素を運ぶ必要性がたかまるので、心拍数や血圧が上昇します。血管壁に動脈硬化がないと、安静時の3~4倍に血流量は増加しますが、動脈硬化があると血管の弾性が低下しているので、心筋に虚血を生じで胸痛などの狭心症発作が誘発されます。心臓は精神的な影響を受けやすくリラックスすると血管は拡張し心拍数や血圧は下がります。心臓血管系におよぼす精神的な影響は視力のほかに音楽などを聴くと不安やストレスが軽減されるので最近では音楽療法として注目されています。聖路加病院の故日野原重明先生によるとモーツァルトの音楽は人間の声の音域で書かれており、とくに高音の部分は赤ちゃんが母親のお腹の中で聴いている母親の声が、血流の周波数に近いので音楽を傾聴することによる心拍や血圧の安定化が図れる音楽療法の重要性を強調しています。我々が調べたところ音楽療法に参加している人は参加していない人に比べて、炎症や心不全を助長するホルモンやサイトカインの分泌が低値で、肺炎や心不全になる頻度も少ないことが分かりました。

春の光や心地よい音楽は脳の活性化になるので天気の良い日には花見に出かけ、施設内では音楽療法士によるコーラスやカラオケに参加しましょう。

心拍数と自律神経

心拍数は1分間に60~100回程度拍動し、加齢とともに下がる傾向にあります。一般に成人では”220-年齢”で、体力の落ちたひとでは”215-年齢”です。人間が一生拍動する心拍数は1分間70回とすると、1時間で4200回,1日で10万回、1年で4000万回、80歳で約32億回昼夜間断なく拍動し続けています。心拍数は活動時には上昇しますが、安静時には低下し、自分の意思とは無関係に自律神経によってコントロールされています。

自律神経は交感神経と副交感神経に分かれます。運動などによって交感神経が優位になると心拍数は速くなります。安静時やリラックスしているときには副交感神経が優位になり心拍数も落ち着き、呼吸数なども遅くなります。高血圧、狭心症、不整脈などの循環器系疾患は自律神経の影響を受けやすく、交感神経が副交感神経に比べて高まっているときには心血管系の事故が多くなります。最近の医療技術の進歩により心拍数を24時間記録可能なホルター心電計で長時間記録可能となり、不整脈のほかに狭心症の発作なども正確に診断することが可能になりました。さらに記録した心電図波形をコンピュータ分析することにより、交感神経が優位か、副交感神経が優位かなどについての評価も可能になりました。交感神経が優位なときに不整脈が頻発している場合は、交感神経の働きを抑えるような薬剤が有効です。脈がとぶような不整脈を感じる人や、脈拍数が遅い人や速い人は通常の心電図のほかにホルター心電図で心拍数を長時間記録して正しい診断をされることをお勧めします。

心拍数は血圧、体温、呼吸数や意識レベルなどと同様に大切なバイタルサインですので、脈拍を正しく測るような習慣を身につけましょう。

~栗田施設長 第113回日本内科学会講演会 演題発表~
『結実する内科学の挑戦~今,そしてこれから~』

開催日
2016年(平成28年) 4月15日(金)~4月17日(日)の3日間
会場
東京国際フォーラム  東京都千代田区丸の内3-5-1

高齢者の呼吸器疾患

平成26年度の厚労省の統計によると肺炎による死亡は90歳以上の超高齢者では、心不全を含む心血管系による死因についで第2位と急増し、その多くは嚥下性肺炎です。呼吸器は酸素と炭酸ガスを交換するガス交換が主な作用です。ガス交換は表面積70~100㎡、約3億の肺胞により毎分約4~7ℓの血液が肺胞を通過することにより行われています。肺胞線毛上皮には肺を守るため免疫系の生体防御作用がありますが、加齢とともに下図に示すように免疫能力は低下し、コラーゲンなどの物質が沈着することにより気道が細くなり感染を起こしやすくなります。呼吸器に病原微生物が侵入すると、さまざまな仕組みで排除されます。鼻腔や喉の粘膜では大きな粒子を捕えます。もし小さな粒子が気管に入ると咳をして外に排出されます。残った粒子は気管支の細毛で外に排出されます。高齢者の場合、いろいろな疾患を同時に持っている比率が高いので、全身の免疫能力の低下と相俟って肺炎が発症しやすくなります。呼吸困難があり、38℃以上の発熱と酸素飽和度が90%以下の場合は日常生活動作(ADL)が著しく低下します。肺炎の既往歴やいろいろの基礎疾患などのある入所者は病院に入院して加療が必要になるので要注意です。

肺炎の治療の原則は症状をやわらげるための鎮咳薬、解熱剤及び病原微生物を死滅させる抗菌薬が中心です。そして体力や抵抗力を高めるために保温や安静が大切です。さらに発熱や食欲不振による脱水症状を防ぐため栄養を十分補給することです。今年は当施設でインフルエンザが流行しました。当施設では厚労省の指示に従いインフルエンザ反応陽性者は個室に隔離していただくとともに抗インフルエンザ薬のタミフルを投与すると同時に、ほかの入所者や職員に予防投与し手洗いマスクなどで対処したところ、うまくコントロールすることができました。皆様のご協力に感謝致します。
嚥下性肺炎予防には口腔ケアのほかに、東北大学のグループにより七味唐辛子に含まれているカプサイシンが有効であるとの報告が最近米国のAm J Geriatrics誌に発表されました。当施設でも積極的に応用したいと考えています。

以上、高齢者の肺感染症について概略致しました。当施設は入所者やご家族が納得できるような介護ケアに励んでまいりますのでいろいろなアドバイスなど頂ければ幸いです。

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